実は、それは、自然界では当たり前のことのようです。
長い間、化学の研究者として
たくさんの反応を見たり、考えたりした経験からも
それは間違いないと思っています。
物質Aと物質Bが反応して、物質Cになる反応を考えてみましょう。
物質Aも物質Bも、実は数え切れないほど、
たくさーんの粒(分子)の集まりです。
たくさんのAの分子と、
同じくたくさんのBの分子が、一斉に反応して、
全部が一度にたくさんのCの分子になるわけではないのです。
そんなことになったら、大爆発です。
たくさんのAの分子の中の一つの分子が、
たまたまBの分子の一つとぶつかって、
「おや、せっかくですから、二人でCに変わりましょうか」
「いいですね」
ということで、変化しようとします。
でも、この変化は簡単ではありません。
一応、頑張ってみます。
でも・・・
「ふうう、やっぱりだめだ」
「残念だね、じゃあ、またね」
といって別れるのです。
そして、また違う分子とぶつかります。
何回かぶつかって、反応しようと試みて、
「やっぱりだめだ」を繰り返して・・・
そのうち、やっと、
「やったー、できた!」
やっとCに変わることができるものが現れます。
たくさんの失敗の中から、成功者が現れるのです。
そして、中には、せっかく成功してCになったのに、
「やっぱり、元のままがいいね」
といって、AとBに戻ってしまうものもいるのです。
化学者は、フラスコを温めることにより、出会いを応援します。
熱エネルギーで、活発に分子たちを動かして、
A分子とB分子のぶつかり合いの回数を増やすのです。
「もっとぶつかれ〜」って。笑
ぶつかり合いが増えるほど、挑戦者は増えて、
反応が早く進むことになるのです。
つまり、自然界では・・・、
「やりたいけど、できない」
を繰り返して、繰り返して、繰り返して、
そのうち、「やっとできた」がたまに起こる、
というのが通常なのです。
その、たまに起こる、「やっとできた」は、
数多くの、「やりたいけどできない」
というものがないと、起こらないのです。
これは、例えば、生物の進化の過程でも同じことが言えます。
どうも、これが自然界の法則のようなのです。
だから、もしもあなたが、
「やりたいけどできない」
ということを悩んでいるようでしたら、
決して、悲観しないでください。
「やりたいけどできない」を、たくさんやればいいのです。
その時やる氣が起こらなかったとしてもいいのです。
言い訳してもいいのです。
化学者の私は、応援します。
「もっとやれ〜」って。
フラスコをあっためながら・・・